「愛してるって何度も言って!私だけを見て!私だけのものになって!他を見ないで!私だけを見詰め続けて!私だけを愛して!」
 そう言い募って相手を追い詰め縛る行為が何を齎すのか僕は判っていた心算でした。だからこそそう叫ぶ他人を僕は冷めた眼で見ていたのです。でも、本当はそう叫ぶ事が出来る其の人を僕は羨ましく思っていたのかも知れません。

 二人で居る時の狭い視野で捉えた狭く閉ざされた空間に居る時の相手の姿だけを見て其の閉鎖空間で生れた嫉妬や独占欲を抑え切れずに爆発させ相手を縛る、そうする事によって得られるのは幼稚な満足感だけで其の後には別離だけが控えているのだと思ってました。
 しかし、反対に相手を失うまいとして自分を抑制する事により相手ではなく自分を縛る結果になり、自分を次々縛り上げていく内に身動きが取れ無くなり自分の元から立ち去る相手を見送るしか出来無くなる事も知っていました。
 どちらにせよ其の先には別離しか無いのであれば他に何が出来ましょう。

 「私だけを愛して」と叫ぶお嬢さんが望むのは別離では無く「君だけを愛してる」という相手の返答。
 だけれど、其のお嬢さんの存在を確りした口調で肯定し望む優しく甘い台詞を囁いてくれる相手なんて本当の意味では居やし無いのです。

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